人身の自由

 人身の自由とは、心身を不当に拘束されない自由を意味します。心身の自由は、他の自由や権利を享受する上で前提条件です。人身の自由の保障がなければ、自由権そのものが存在しません。ゆえに、人身の自由は、精神の自由や経済の自由と並んで個人の尊厳を支える基本的な人権となります。

奴隷拘束からの自由

 日本国憲法18条には、
「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」
 とあります。
 条文にある「奴隷的拘束」とは、自由な人格者であることと両立しないような人身の自由の拘束を指します。例えば、人身売買を目的とした娼妓契約(売春)や、監獄部屋的な人身拘束がこれにあたります。
 また「意に反する苦役」とは、本人の意志に反して強制される労役を意味します。例えば、強制的な土木工事への従事などがこれにあたります。

適正手続きの保障

 日本国憲法31条には、
「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」
 とあります。
 つまり、条文の上では手続きを踏むことだけが明記されています。
 しかし、手続きをするように規定したとしても、その手続きの内容が適正でなければ、適正な手続きとはいえません。
 したがって、以下のことも意味していると解されます。
・法律で定められる手続が適正でなければならないこと
・実体もまた法律で定められていなければならないこと
・法律で定められた実体規定も適正でなければならないこと

告知と聴聞

 憲法31条の適正手続きの内容として、告知と聴聞が重要となります。
 告知とは、公権力が国民に刑罰や不利益を課す場合、当事者にあらかじめその内容を伝えることです。
 聴聞とは、告知された当事者に対して弁解と防御の機会を与えることです。
 憲法31条の適性手続きのためには、告知と聴聞がきちんと行われなければなりません。

行政手続きへの準用

 憲法31条は、本来、刑事手続きに関する規定です。しかし、今日においては刑事手続についてだけではなく、行政手続における人権侵害も問題になっています。
 そこで、国民の生活への行政介入が適正な手続を踏んで行われているかが重要性を持つように至っています。
 憲法31条の規定は、行政手続にも当てはめられることがあると考えられえています。

【判例】第三者所有物没収事件

判決年月日など

 昭和37年11月28日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 船舶による韓国への密輸を企てたが未遂に終わり、関税法違反として逮捕され、有罪となった者がいました。
 この者が、没収された船舶、貨物の中には第三者の所有物も含まれていました。この者ら当該所有者に財産権擁護の機会をあたえず附加刑として没収したのは、憲法違反だと主張しました。

争点

 この事案では、憲法31条の適正手続の内容として、告知と聴聞を受ける権利は含まれるかなどが争点となりました。

結論

 最高裁は、含まれるという判決を出しました。

この事案のポイント

 憲法31条には、
「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」
 とあります。
 最高裁は、所有物を没収される第三者についても、告知、弁解、防衛の機会を与えることが必要だとしました。

【判例】成田新法事件

判決年月日など

 平成4年7月1日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 成田空港建設反対派が激しい反対運動を繰り広げ、開講予定日直前には反対派集団が空港内に乱入して機会を破壊するなどの事件が発生しました。
 そこで、国会は「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(いわゆる成田新法)」を制定しました。この法律を理由に、当時の運輸大臣は規制区域内に反対派が建設した鉄筋コンクリート地上3階、地下1階の建築物の使用禁止命令が出されました。
 この措置を巡り、反対派は、憲法31条などに反するとして、命令の取消しおよび慰謝料を請求しました。

争点

 この事案では、行政上の不利益処分にも、憲法31条が準用されるかが争点となりました。

結論

 最高裁は、準用される余地があるとしました。

この事案のポイント

 最高裁は、行政手続については、刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが31条の保障の枠外にあるとするのは相当でないとしました。

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