職業選択の自由

 職業選択の自由とは、自己が就く職業の自由のことをいいます。
 また、職業選択の自由の中には営業の自由が含まれています。営業の自由とは、自己の選択した職業を行う自由のことです。
 営業の自由は、職業選択の自由を保障する上で重要なものです。なぜなら職業を選択する自由を認められても、それを行う自由を認められなければ、無意味だからです。

職業選択の自由の限界

 職業選択の自由は、表現の自由等の精神的自由権に比べて、一般的により強い規制を受けます。
 職業選択の自由に対する具体的な規制としては、その規制目的によって消極目的規制と積極目的規制に分けられるのが一般的です。

消極目的

 国民の生命及び健康に対する危険を、防止もしくは除去ないし緩和するために課せられる規制をいいます。
 以下のものが消極目的による規制です。
・許可制(風俗営業、飲食業、賃金業など)
・届出制(理容業など)
・資格制(医師、薬剤師、弁護士など)

積極目的

 福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、社会的・経済的弱者を保護するための規制をいいます。
 以下のものが積極目的による規制です。
・特許性(電気、水道、鉄道等の公共事業)
・国家独占(旧郵便事業、旧タバコ専売)

規制の合憲性判定基準

 経済活動の自由としての職業選択の自由の規制に対する合憲性の判断基準は、まず二重の基準の理論です。二重の基準の理論から、精神の自由の規制を審査するときよりも緩やかな審査基準を使うことになります。
 この基準は、合理性の基準と呼びます。合理性の基準とは、立法の目的と目的達成の手段の両方についてを、一般人を基準にして合理性が認められるかどうかを審査するものといいます。
 さらに、合理性の基準の中でも、消極目的規制と積極目的規制で、審査基準を分けて考えるのが一般的です。これを二分法といいます。
 職業選択の自由に関する審査基準は以下のように分かれます。

消極目的規制

 厳格な合理性基準が用いられます。裁判所が規制目的の必要性、合理性および同じ目的を達成できる、より緩やかな規制手段の有無を立法事実に基づいて審査されます。
 これは、一定の害悪発生の危険は、より客観的に認定できることから、裁判所の判断になじみやすいとされます。よって、やや厳格な審査基準として、厳格な合理性の基準があてはあります。

積極目的規制

 明白性の原則が用いられます。
 当該規制が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲とします。
 これは、社会の経済上の政策判断を前提とする積極目的規制の場合、裁判所よりも国会の方が適切な政策判断をなし得ることから、政治部門の裁量的判断を尊重すべきとされるからです。よって、かなり緩やかな明白性の原理があてはまります。

【判例】小売市場距離制限事件

判決年月日など

 昭和47年11月22日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 大阪府では、過当競争防止のために、700メートルの小売市場間の制限距離が設けられていました。
 この距離制限を無視し無許可のまま小売市場を開こうとした者が現れて起訴され、罰金刑に処せられました。
 罰金刑に処されたこの人物は、距離制限などについて、我が国の経済体制に違背し、既存業者の独占的利潤追求に奉仕するため、憲法22条1項などに違反すると主張しました。

争点

 この事案では、小売市場の許可規制は合憲かが争点となりました。

結論

 最高裁は、合憲であるという判決を出しました。

この事案のポイント

 憲法22条1項には、
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
 とあります。
 これについて最高裁は、経済的基盤の弱い小売業の事業活動の機会を適正に確保し、かつ、小売商の正常な秩序を阻害する要因を除去する必要があると判断しました。
 その一方で、この判決は、小売市場の乱設に伴う小売商相互間の過当競争によって、小売商の共倒れから、小売商を保護するための措置であるとしました。
 以上のことから、この事案は憲法22条1項に違反するものではないとしました。

【判例】薬局距離制限事件

判決年月日など

 昭和50年4月30日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 広島県の条例には、薬事法6条に基づいて、薬局開設に距離制限規定を設けてしました。
 原告となった株式会社は、薬局開設の許可申請を行いましたが、条例である距離制限規定に違反しているとして不許可処分を下されました。
 そこで原告は、薬事法6条および、それに基づいた条例は憲法22条1項に違反しているとして起訴しました。

争点

 この事案では、職業活動の自由に対する消極的目的による制限についてなどが争点となりました。

結論

 最高裁は、薬局開設に関する距離制限は憲法に違反していると判断しました。

この事案のポイント

 この事案は、距離制限に関する数少ない違憲判決の一つです。距離制限に関する訴訟は他の職業(風呂屋、中小市場など)でも問題なっていますが、憲法違反とされたのは本判例だけです。

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