民事手続

 社会生活において、意見対立や利害の衝突が起きた場合、自力救済は原則として禁止されています。自力救済とは、何らかの権利を侵害された者が、司法手続によらず実力をもって権利回復をはたすことをいいます。
 自力救済が広く認められると、力の強い者が弱者を蹂躙することになりかねず、社会の平和を保てないからです。
 その代わりに、国家機関が紛争当事者双方の主張を聞いて、その是非を判断することが民事手続による紛争解決です。

合意による紛争処理

 民事手続の中核となるのは、判決手続(民事訴訟手続)です。
 しかし、当事者の合意により紛争が解決できるのであれば、多大な労力をかけて判決手続を行う必要はありません。
 そこで合意による紛争処理方法も存在します。
 合意による紛争処理方法には、以下のものがあります。

和解

 和解とは、紛争が発生した場合に、まず、当事者間で交渉を行い、互いに譲歩して、新しい法律関係を契約に設定することをいいます。
 民法695条には、
「和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。」
 とあります。

起訴前和解

 即決和解ともいいます。
 起訴前和解とは、訴えを提起する前に、簡易裁判所に紛争当事者が出廷することでなされる和解です。
 起訴前和解は費用も安く、簡単にできて、判決と同じ威力をもっています。
 民事訴訟法275条1項には、
「民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。」
 とあります。

調停

 調停とは、国家機関である調停機関による紛争解決方法をいいます。
 調停機関の介入により、両当事者に譲歩を求め、両当事者の納得によって妥当な処理を図ります。
 調停には、以下の2種類があります。
・民事調停(簡易裁判所などで行われる)
・家事調停(家庭裁判所などで行われる)
 民事調停、家事調停のいずれも原則として、裁判官1名と民間人である調停委員2名で構成される調停委員会で行います。
 紛争処理に関する合意が成立し、調書に記載すると、判決と同一の効果を生じます。

仲裁

 仲裁とは、当事者の合意に基づき、第三者である仲裁人の判断による紛争解決を行う手続をいいます。
 仲裁には、自由な手続で、専門領域における事情や商習慣などに詳しい仲裁人により、的確かつ迅速な判断が得られるという長所があります。
 仲裁の判断は、判決と同一の効力を持ちます。
 仲裁は、契約によって特定事項の紛争処理を仲裁に一任して判断に従うという点で、合意による紛争処理に属します。

ADR

 ADRは裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)の略称です。広く裁判所を含めて、第三者機関の関与による裁判以外の紛争解決方式をいいます。
 ADRの目的は、合意を基礎として自主的に紛争を解決しようとする紛争当事者の基本姿勢を制度的に支援することにあります。
 ADRには、
・裁判所に設置されたADR
・裁判所外のADR
 があります。
 裁判所に設置されたADRには、裁判上の和解と調停があります。
 一方で、裁判所外のADRには、以下のものがあります。
・行政型…中央労働委員会、公害等調整委員会など
・民間型…交通事故紛争処理センター、日本消費者連盟など
 ADRのメリットには以下のようなものがあります。
・紛争当事者がより手軽に手続を利用できる
・簡易で迅速、かつ低廉な紛争処理ができる
・実体法規にとらわれない妥当で柔軟な救済内容を形成できる

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