審理手続

 行政不服申立ての審理対象には、処分または不作為の適法性の問題(法律問題)のみならず、当・不当の問題(最良問題)も含まれます。

審理手続(審査請求の場合)

審理の準備

 審査庁は、審理請求書が提出されると、まず不服申立要件をチェックします。この際発見した補正可能なミスについては、相当の期間を定めて補正を命じなければなりません。
 要件をみたいす適法な審査請求の場合には、審査庁は審査請求書の副本を処分庁に送付し、その後、処分庁に弁明書の提出を請求することができます。なお、弁明書は、正副2通を正出しなければなりません。
 そして、処分庁から弁明書の提出があったときは、審査庁は、審査請求の全部を容認すべき場合を除き、弁明書の副本を審査請求人に送付しなけらばなりません。
 また、これを受けた審査請求人は、反論書を提出できます。

本案審理(内容の審理)

 申立て要件を満たしている審査請求については、次に本案審理がなされます。
A.書面審理主義と職権主義
 審査請求の本案審理は、書面審理を中心とし、原則として審査庁の職員で進められます。また審査庁は、申立人の主張にとらわれることなく、申立人の主張しない事項も審理し、決裁することができます。行政不服申立てによる救済には、手続の簡易性と迅速性が求められるからです。
 証拠調べ手続きも、原則として審査庁の職権により進められます。例えば、審査庁は、職権で参考人の陳述および鑑定を要求し、関係物件の正出を求め、検証を行い、さらに審査請求または参加を審尋することができます。
B.当事者主義的要素の加味
 もっとも、行政不服審査法は「審査請求人または参加人の申立てがあったときは、審査長は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない」として、当事者に口頭での意見陳述権を認めています。手続の公正を実現するためには、言いたいことを言わせることが重要だからです。
 また、審査庁の独断を防止するための手段も当事者には用意されています。具体的には、
・審査請求人および参加者による証拠などの提出権
・審査庁の証拠調べ手続の発動を促す権利
・証拠調べ手続に立ち会う権利および提出物件の閲覧を請求する権利
 を保証しています。
C.利害関係人の参加
 利害関係人は、審査庁の許可を得て、参加人として審査請求に参加することができます。ここにいう利害関係人とは、広く審査請求の結果によって直接自己の権利利益に実質的な不利益を被るすべてを含むとされます。参加制度の趣旨は、参加人に自分の利益を守るために言いたいことを言わせる機会を与える点にあります。
 また、審査庁は、必要があると認めるときは、利害関係者に対し、参加人として審査請求に参加することを求めることができます。適切な判断をするために、利害関係人の意見を聴くことが必要な場合があるからです。

審理手続(異議申立ての場合)

 異議申立手続は、審査請求手続とほぼ同様の流れを辿ります。しかし、異議申立手続においては審査庁が存在しませんから、審査庁に対する弁明書の提出は準用されていません。
 また、処分庁になされる証拠物件の提出、及びその閲覧も準用されていません。

執行不停止

 不服申立ては、処分の効力、処分の執行、または手続の続行を妨げません。要するに、不服申立てがなされても行政活動は停止しません。不服申立ての濫用によって、行政活動が停滞するのを回避する趣旨です。

執行不停止の例外

任意執行停止

A.行政庁の上級行政庁である審査庁である審査庁がする執行停止
 処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより、又は職権で、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部、または一部の停止その他の措置をすることができます。その他の措置とは、処分の効力を一部制限するなどの措置をいい、上級行政庁の監督権に基づく措置です。
 なお、執行停止の申立てがあったときは、行政庁は、すみやかに執行停止をするかどうかを決定しなければなりません。
B.処分庁の上級行政庁以外の審査庁がする執行停止
 処分庁の上級行政以外の審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取したうえで執行停止することができます。ただし、処分の効力、処分の執行、または手続の全部、または一部の停止以外の措置をすることはできません。つまり停止しかできません。

必要的執行停止

 審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行、または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため、緊急の必要があると認めるときは、審査庁は執行停止をしなければなりません。
 ただし、執行停止によって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行もしくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、または本案(不服申立て)について理由がないとみえるときは執行停止をしなくても構いません。
 なお、任意的執行停止、必要的執行停止のいずれの場合も、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは
処分の効力を停止することはできません。

執行停止の取消し

 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼし、または処分の執行もしくは手続の続行を不可能にすることが明らかにとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができます。

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