不服申立て要件

 実際に不服を申し立てたとしても、すべてが審査の対象として取り上げられるわけではありません。
 些細で取るに足らない不満をも審査せねばならないとすると、他の本当に取り上げるべき不満を十分に審査すべき機関が奪われることになります。
 それゆえに、一定の不服申立要件を満たさない不服申立ては、内容について審理されず、却下されることになります。つまり、門前払いです。要件を満たした不服申立てのみが、その内容に関する審理の段階に進めます。
 なお、不服申立要件には、以下の5つがあります。
・行政庁の処分、または不作為が存在すること
・不服を申し立てる権限のある者によって、不服申立てがなされること
・不服申立てを処理する権限を要する行政庁に対して不服申立てがなされていること
・不服申立期間内に不服申立てがなされること
・形式と手続を遵守すること

不服申立て要件①

 不服申立て要件の一つ目は、行政庁の処分、または不作為が存在することです。
 不服申立ての対象となるのは、行政庁の処分と不作為に限られますが、対象はまだ絞られます。
 行政庁の処分の中でも、不服申立ての対象となるものとならないものがあります。

 どのような事項を不服の申立の対象とできるか、という点については、法律が特に列記した事項についてだけ不服申立てを認める列記主義と、法律に例外の定めのある場合を除き、原則としてすべての処分につき不服申立てを認める概括主義との考え方があります。

異議申立てと審査請求の場合

 行政不服審査法は、異議申立てと審査請求とについては、概括主義を採用しています。
 列挙主義は、立法技術上困難だからです。

再審査請求の場合

 再審査請求については、列挙主義を採用しています。なぜなら、審査請求の裁決に不服があれば、重ねて行政機関の判断を求めるよりは、行政とは無関係な第三者である裁判所に救済を求める方が中立公平な判断が期待でき、権利救済にとって効果的だからです。
 このような判断から、行政不服審査法は再審査請求をすることができる場合、以下の場合に限定しています。
・法律、条例に審査請求をすることができる旨の定めがあるとき。
・審査請求をすることができる処分につき、その処分をする権限を有する行政庁(「原権限庁」という)が、その権限を他に委任した場合において、委任を受けた行政庁がその委任に基づいてした処分に係る審査請求につき、原権限庁が審査庁として裁決したとき。

 包括主義の下、例外的に法律で除外された「処分」(異議申立てと審査請求ができない「処分」)としては、以下のものがあります。
・行政不服審査法によって、不服申立てをすることができないと規定されている処分
・行政不服審査法以外の法律で、不服申立てをすることができないと規定されている処分
・行政不服審査法に基づいて行われる処分(すなわち不服審査の過程でなされる処分)(同条本文のかっこ書「この法律に基づく処分を除く」)。不服審査の過程で行われた処分については、すでに審査庁の判断がなされており、重ねて不服申立てを認めることは審理の重複になるからです。例えば、証拠物件の提出命令、出頭命令、証拠閲覧の拒否、裁決・決定等です。

不服申立て要件②

 不服申立て要件の二つ目は、不服を申し立てる権限のある者によって、不服申立てがなされることです。
 判例は、不服申立てができるのは、行政庁の処分などに関して不服申立てをする法律上の利益がある者であって、処分とは無関係な第三者や国民一般の利益の保護を図るために不服申立てをすることはできないとしています。
 なお、自然人や法人はもちろん、権利能力なき社団・財団でも、代表者、または管理人の定めがあれば、その名で不服申立てをすることができます。これらの団体は、世の中においてその名で活動しているため、その実態に即して団体そのものに不服を申し立てる権限を認めたものです。

 不服を申し立てる権限のある者が大勢いるときの規定は以下の通りです。

総代の選任

 多数人が共同して不服申立てをしようとするときは、3人を超えない人数の総代を互選することができます。手続きを簡潔にするためです。この趣旨を生かすため、総代が選任されたときは、共同不服申立人は総代を通じてのみ、不服申立てに関する行為をすることができます。そして、行政庁からの通知その他の行為は、総代全員に対してではなく、1人の総代に対して行えばよいことになっています。

総代の権限

 総代は、各自、他の共同不服申立人のために、不服申立ての取り下げを除き、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができます。

総代の資格の証明

 総代の資格は、書面で証明しなければなりません。また、総代がその資格を失ったときは、不服申立ては書面でその旨を審査庁(意義申立てにあっては、処分庁または不作為庁、再審査請求にあたっては、再審査庁)に届けなければなりません。手続に関与する権限を有するのが誰であるのかを明確にするためです。

 代理人による不服申立てについては以下の通りです。

代理人による不服申立て

 不服申立ては、代理人によってすることができます。代理人は、各自、不服申立人のために、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができます。ただし、不服申立ての取下げの委任があれば、訴えの取下げができる点で、総代と異なっています。このような相異が生じる理由は、代理人と本人との関係が個別的な信頼関係に基づくことに求められます。

代理人の資格の証明など

 代理人の資格は、書面で証明しなければなりません。また、代理人がその資格を失ったときは、不服申立人は、書面でその旨を審査庁(異議申立てにあたっては、処分庁または不作為庁、再審査請求にあっては、再審査庁)に届け出さなければなりません。手続に関与する権限を有するのがだれであるのかを、明確にするためです。

不服申立て要件③

 不服申立て要件の三つ目は、不服申立てを処理する権限を要する行政庁に対して不服申立てがなされていることです。
 不服申立てを処理する権限を有する行政庁は、処分庁、不作為庁、審査庁、再審査庁です。そこに不服申立てがなされていることが必要です。

不服申立て要件④

 不服申立て要件の4つめは、不服申立期間内に不服申立てがなされることです。

審査請求期間

 審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければなりません。不服申立書を郵便または信書便で提出した場合には、郵送に要した日数は不服申立期間に参入されません。郵便事情によっては、不服申立期間を守ることができない場合が考えられるからです。なお、当該処分について異議申立てをしたときには、当該異議申立てについての決定があったことを知った日の翌日から起算して30日以内にしなければなりません。
 ただし、天災その他審査請求をしなかったことについてやむを得ない理由があるときは、期間内でなくても構いません。もっとも、この場合には、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内に審査請求しなければなりません。
 また、審査請求は、処分(当該処分について異議申立てをしたときには、当該意義申立てについての決定)があった日の翌日から起算して1年を経過したときはすることができません。ただし、正当な理由があるときは、1年を過ぎても審査請求をすることができます。

異議申立期間

 異議申立ては、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければなりません。ただし、天災その他異議申立てをしなかったことについてやむ得ない理由があるときは、期間内でなくても構いません。もっとも、この場合には、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内に、異議申立てをしなければなりません。
 また、異議申立ては、処分があった日の翌日から起算して1年を経過するときにはできません。ただし、正当な理由があるときは1年を過ぎても異議申立てをすることができます。

再審査請求期間

 再審査請求は、審査請求についての決裁があったことを知った日の翌日から起算して30日以内にしなければなりません。ただし、天災その他再審査請求をしなかったことについてやむ得ない理由があるときは、期間内でなくても構いません。もっとも、この場合には、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内に、再審査請求をしなければなりません。
 また、再審査請求は、処分があった日の翌日から起算して1年を経過するときにはできません。ただし、正当な理由があるときは1年を過ぎて再審査請求をすることができます。

不作為についての不服申立て

 不作為についての不服申立てについては、その性質上、不服申立期間の定めはありません。何もしない、という状態が続くのが不作為ですから、カウントし始めることがないことに加えて、違法な不作為が継続しているにもかかわらず、不服申立ての道が遮断されているのは適切ではないからです。

不服申立て要件⑤

 不服申立て要件の5つ目は、形式と手続を遵守することです。

不服申立ての形式

 不服申立ては、他の法律(条例に基づく処分については、条例を含む)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、書面(不服申立書)を提出しなければなりません。
 書面によるのは、不服申立ての存在や争点を明確にし、かつ、手続を慎重にするためです。
 書面は、異議申立ての場合を除き、2通(正本と副本)を提出しなければなりません。異議申立ての場合は1通で足ります。なお、電子情報組織を使用して審査請求がなされた場合には、正副2通お審査請求書が提出されたものとみなされます。

不服申立書の記載事項

 不服申立書には、必要事項を記載しなければなりません。
 審査請求の対象となる処分のあった日は必要な記載事項ではなく、処分があったのを知った日が記載事項となっています。これは、審査請求の60日の不服申立期間の処分のあったことを知った日を起算としているからであり、また、1年の申立期間の起算日たる処分のあった日については行政庁の側に立証させる方が適切だからです。

補正

 不服申立てが要件を満たさずに不適法であっても、補正することができるときは、処分庁および審査庁は相当の期間を定めて、その補正を命じなければなりません。直ちに却下されるのみだと足りない記載が明らかにならず、結果的に60日の申請期間を過ぎてしまう危険もあります。それゆえ、補正できる程度の違法は補正されるべきとした方が望ましいのです。

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