法の下の平等

 憲法14条では、国家は国民を不合理に差別してはならないとしています。
 これは、立法、行政、司法すべての国家行為を拘束する一般原則です。同時に、個々の国民に対しては平等権、つまり、法的に平等に扱われる権利や不合理な差別をされない権利を保障しています。

法内容の平等

「法の下」の平等には、法の適用の平等はもちろんのこと、法の内容の平等も含みます。法が制定される際にも平等ということが要求されていると考えられています。なぜなら、法の内容が不平等ならば、そもそも法によって人々を平等に扱うことができないからです。

相対的平等

 法の下の「平等」とは相対的平等をいいます。これは、人の事実上の差異に着目して、等しいものは等しく、等しくないものは等しくないと取り扱うべきであるという考え方です。
 判例は、相対的平等の立場から、人の事実上の差異に着目した合理的な差別は許されるとしています。

平等違反の違憲審査基準

 憲法14条には、
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
 とあります。
 つまり、憲法は「人種」「信条」「性別「社会的身分又は門地」を基準に差別してはならないと言っています。
 では、憲法14条に書かれていない財産や学歴、あるいは年齢などの事柄はどう解釈されるのでしょうか?
 憲法14条で規定されていない事柄により平等原則違反が争われる場合は、「二重の基準」に基づいて差別の合理性が判断されるのが妥当とされます。
「二重の基準」とは、精神的自由権と経済的自由権を比較して、精神的自由権を制限する法は、経済的自由権を制限する法より、厳格な基準によって審査されるべきとする理論です。

【判例】サラリーマン税金訴訟事件

裁判年月日・判決の種類

 昭和60年3月27日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 私立大学の教授が原告となった事件です。彼は旧所得税法が事業所得者などに比べて給与所得者(サラリーマン)に著しく不平等な負担を課しているとして起訴しました。
 彼が不公平だと起訴したものの中には、事業所得者は必要経費などを控除されるのに、給与所得者にはそれがないというものがありました。

争点

 この事件での争点の一つに、サラリーマンに必要経費の実額控除を認めないことは、事業所得者にこれを認めていることに比べて法の下の平等に違反しているかがあります。

結論

 最高裁は、必要経費についてサラリーマンと事業所得者との間に差を認めても法の下の平等に違反しないとしました。

この事案のポイント

 判決において最高裁は以下の指摘をしました。
・サラリーマンの必要経費と事実上の経費の区分は困難である
・サラリーマンはその数が膨大であり、各自が申告をすることは技術的、量的に困難であり混乱も予想される
・サラリーマン個々人の主観的事情や、立証技術の巧拙によってかえって租税負担の不公平をもたらす恐れがある

【判例】堀木訴訟

判決年月日など

 昭和57年7月7日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 国民年金法に基づく障害福祉年金を受給していた視覚障害者の女性に、離別した内縁の夫との間に子どもがいました。
 昭和45年年2月、その養育のため兵庫県知事に対し、児童扶養手当法に基づく受給資格を請求しました。
 しかし、同知事は女性が障害福祉年金を受給しているので児童扶養手当の受給資格を欠くとして申請を却下しました。
 そこで女性は、併給禁止規定が憲法に違反するとして提訴しました。

争点

 この事案では、併給禁止規定が憲法25条および、同法13条と14条1項に違反するかが争点となりました。

結論

 最高裁は、併給禁止規定は、憲法25条および、同法13条と14条1項に違反しないとしました。

この事案のポイント

①憲法25条について
 憲法25条には、
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
 とあります。
 憲法の規定を実現化するには、国の財政事情は無視できません。また、多方面にわたる複雑多様で、高度な専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断が必要であるとされます。
 以上のことから、最高裁は憲法25条の規定に趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講じるのかの選択決定は立法府に裁量が委ねられているとしました。
②憲法13条と14条1項について
 憲法13条と14条1項にはそれぞれ、
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
 とあります。
 障害福祉年金を受けることができる立場にある女性は、そのような立場にない者との間に児童扶養手当の普及に関して差別を生じることとなるにしても、この差別は不当なものとは言えないと最高裁はしました。
 また、この事案における併給禁止条項が児童の個人としての尊厳を害し、憲法13条に違反する立法であるとも言えないともしました。

【判例】女性再婚禁止期間事件

判決年月日など

 平成7年12月5日・最高裁第三小法廷・判決

事案の概要

 前夫と離婚して6ヶ月が経過していない女性が、別の男性との婚姻の届出をしました。しかし、この届出は女性の民法733条の再婚禁止期間規定を理由に受理されませんでした。そこで、この女性と男性は、婚姻の届出の遅れのために精神的損害を被ったとして訴訟を提起しました。

争点

 この事案では、民法733条は憲法14条1項に反し、この民法を改廃しないことが違反でないかが争点となりました。

結論

 最高裁は、違反ではないとしました。

この事案のポイント

 憲法14条1項には、
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
 とあります。
 この事案において最高裁は、合理的な根拠に基づいて、各人の法的取扱いに区別を設けることは、14条1項に違反しないとしました。
 女性の場合、原則として前の婚姻が終了して6ヶ月が経たないと再婚することはできません。これは、女性が妊娠していた場合、その子どもが前夫の子か、後夫の子かを混乱させないための規定です。
 したがって、男性の場合には、再婚禁止期間はありません。前の婚姻が終了してすぐに再婚したとしても法的には何ら問題が生じません。

【判例】非嫡出子相続分差別規定合憲判決

判決年月日など

 平成7年7月5日・最高裁大法廷・決定

事案の概要

 非嫡出子(婚姻関係から生まれた子でない者のこと)の父が死亡し、相続が開始されました。その際、非嫡出子の相続分が嫡出子(婚姻関係から生まれた子のこと)の相続分の2分に1であると定めた民法900条4号ただし書前段の規定は、憲法14条1項に違反すると主張が起きました。

争点

 この事案では、民法900条4号ただし書前段の規定は、憲法14条1項に違反するかが争点となりました。

結論

 最高裁は、民法900条4号ただし書前段の規定は、憲法14条1項に違反しないとしました。

この事案のポイント

 民法900条4号ただし書前段には
「(子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。)ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし(以下略)」
 とあります。
 一方で憲法14条1項には、
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
 とあります。
 民法は法律婚主義を採用しています。そこで最高裁は、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図った民法900条4号ただし書前段には合理的根拠があるとし、これは憲法14条1項に違反しないとしました。

【判例】尊属殺人重罰規定違憲判決

判決年月日など

 昭和48年4月4日・最高裁大法廷・判決

事案の概要

 実父に夫婦同様の関係を強いられてきた被告人が、虐待にたまりかねて実父を殺害し、自首しました。
 その当事、刑法200条があり、尊属(つまり自分の親や祖父母)に対する殺人は、死刑と無期刑だけであり、執行猶予をつけることはできませんでした。
 そこで、刑法200条は憲法14条1項に違反しているのではということが問題となりました。

争点

 この事案では、普通殺に比べて、尊厳殺に著しく重罰を科すことが、憲法14条1項に違反しているのではということが争点となりました。

結論

 最高裁は、刑法200条は憲法14条1項に違反するとしました。

この事案のポイント

 憲法14条1項には、
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
 とあります。
 旧刑法200条の立法目的は尊属を卑属(子や孫)、または配偶者が殺害することが一般に高度の社会的道義的非難に値するものとし、厳罰をもってこれを禁圧しようとすることでした。
 しかし、最高裁は、旧刑法200条は、尊厳殺の死刑または無期刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超えているとしました。
 以上のことから、憲法14条1項に違反して無効であると判決が出されました。

議員定数不均衡の合憲性

 議員定数不均衡とは、いわゆる「一票の格差」と呼ばれる問題です。
 国会議員の選挙において、各選挙区の議員定数の配分に不均衡が原因で、有権者数と選挙人の投票価値(1票の重み)に不平等が生じる問題を言います。
 例えば、ある選挙区では、1人を当選させるのに1万票が必要だったとしましょう。対して別の選挙区では1人を当選させるのに6万票が必要だとします。「1万票で1人」と「6万票で1人」では、前者が後者の6倍の力を持っていることになり、その点が問題となります。

 投票価値の平等は政治的価値の平等ということです。選挙区間での投票価値の比率は1:1が理想的であるといえます。
 しかし、有権者の人口比や、政策的要素や技術的要素を加味した結果、合理的な理由があるならば、この比率が多少は守られなくても許されるとされます。
 判例では、参議院議員の選挙の場合は1対6程度を違憲状態としています。参議院議員の選挙の場合、衆議院議員の総選挙と比べて大きな格差が許容されています。この違いは、参議院には地域代表的性格と半数改選制という特殊性があるからだとされています。

 判例は、不平等状態が生じても、ただちに違憲になるとはしません。人口の変動状態を考慮して、合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのに、それが行われない場合に初めて違憲になるものとしています。

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