抵当権

 抵当権とは、債務の担保に設定された不動産によって、債権者が自分の債権の弁済を受ける権利です。
 質権と似ていますが、抵当権では債務者または第三者が占有を移転させないという点で異なります。
 抵当権は、債務者自らが所有する土地や建物に設定する場合もあれば、他人のために自らの土地や建物を提供して設定する場合(これを物上保証人という)もあります。

抵当権の及ぶ範囲

 抵当権の効力は、抵当目的物のほか、設定行為に別段の定めがない限り、付加一体物にも及びます。
 抵当権が及ぶ範囲には以下のものがあります。

抵当目的物

 抵当権の目的物になりうるものは以下のものです。
・不動産
・地上権
・永小作権

付加一体物

 付加一体物とは、不動産と一体をなして効果を高めるものです。
 付加一体物には、以下のものがあります。
・化合物
・従物
・従たる権利

果実

 果実とは、物より生じる経済的な収益のことです。
 果実には、天然果実と法定果実があります。

物上代位

 担保物権の目的物が消滅すれば、担保物権も消滅します。担保目的物の滅失によって別の価値が生じた場合、この価値代表物に対しても担保権の効力が及びます。これが物上代位です。
 抵当権者が、物上代位によって優先弁済権を受けるためには、価値代表物の払渡し・引渡しの前に、差押えをすることが必要です。
 物上代位の目的物には以下のものがあります。
・抵当不動産が売却されたときの売買代金
・抵当不動産の賃料
・抵当不動産が滅失・損傷したことで債務者が受ける損害賠償請求権や保険金請求権

抵当権の順位

 一つの不動産には複数の抵当権を設定することが可能です。しかし、この場合、競売代金の配当は、抵当権の順位に従います。
 抵当権の順位は、登記の前後で決定されます。まず、1番抵当権者が競売代金から債権額分の配当を受け、その残り分から2番抵当権者が配当を受けます。
 抵当権の順位を変更するには、各順位の抵当権者と利害関係者の承諾が必要です。そして、登記によって、その効力が生じます。

抵当権と用益権の関係

法定地上権

 同一の所有者に属する土地・建物に抵当権または強制競売が行われたとします。その結果、土地と建物の所有者が異なることとなったとき、法律の規定により発生する地上権が法定地上権です。
 法定地上権の成立要件には以下の4つがあります。
・抵当権設定時に、土地の上に建物が存在する
・抵当権設定時に、土地と建物の所有者が同一
・土地と建物のどちらか、または両方に抵当権が設定された
・競売の結果、土地と建物の所有者が別になること

土地抵当権者の建物一括競売権

 土地に抵当権を設定した後に建物が建設された場合、本来、法定地上権は成立しません。よって、抵当権者は土地を更地にして競売することが可能です。
 しかし、土地と建物を一括で競売する方が、土地の買い手を見つけやすく、建物を撤去する手間も省けます。そこで、土地に抵当権を設定した後に、建物が築造された場合に土地抵当権者は、土地とともに建物を競売することができます。
 ただし、抵当権の優先代弁権の及ぶ範囲は、更地として競売された土地の価格分のみになります。

借主の保護

 抵当権と賃借権は、登記が先に行われたものが優先されます。
 よって、抵当権が賃借権より先に登記されている場合は抵当権が優先されます。抵当権による競売が行われると、賃借人は買受人に対抗できず、明渡しが必要となります。
 ただし、以下の要件がそろえば、賃借権は抵当権に対抗できます。
・賃借権の登記がある。
・抵当権者全員の同意がある。
・抵当権者全員の同意の登記がある。
 また、上記の同意の登記が得られず、建物が競売された場合であっても建物明渡猶予期間の制度により借主は保護されます。これは競売により買受人が所有権を取得した時から6ヶ月間は、建物の明渡しを拒否できる制度です。

抵当権の侵害

物権的請求権

 物権の内容を実現するために認められる請求権です。物上請求権ともいいます。
 抵当権を持つ物権を、第三者が不法占有した場合、その排除を求めることができます。
 また、山林に抵当権が設定されている場合、抵当権設定者や第三者が不法に樹木の伐採・搬出をしたとします。この場合、それを停止する搬出禁止の請求ができます。

不法行為に基づく損害賠償請求権

 第三者の不法行為により、目的物の価値が減少し、被担保物権から十分な利益が得られなくなった場合、損害が発生したといえます。したがって、第三者に対して損害賠償請求ができます。

第三者との関係

代価弁済

 代価弁済とは、抵当不動産について所有権または地上権を買い受けた者(第三取得者)が、抵当権者の請求に応じてその買受代金を抵当権者に支払うことにより、自己に対する抵当権の負担を免れる制度です。

抵当権消滅請求

 抵当権消滅請求とは、抵当不動産について所有権を取得した第三者が、自己の提示する価格で抵当権の消滅を請求できる制度のことをいいます。
 代価弁済制度との違いは、抵当不動産の第三取得者側がそれに応じず、抵当権を実行して競売を申し立てることができる点にあります。

抵当権の消滅時効

 抵当権は20年の消滅時効にかかります。
 ただし、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しないとされます。

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