登記を対抗要件とする物権変動

 民法177条には、
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」
 とあります。
 この物権変動は、意思表示による場合に限らず、相続や時効取得など、すべての物権変動を含みます。これを無制限説といいます。

取消しと登記

 取消しと登記の関係について確認していきます。
 ちなみに、「取消し」と混同される概念に「解除」があります。民法上は区別されるので注意が必要です。
 取消しとは、いわば契約そのものをなかったことにすることです。契約に際して詐欺や脅迫が行われていた、あるいは契約の相手が制限行為能力者だったなど、契約行為そのものに瑕疵があった場合に行われることが多いのが取消しです。
 一方で解除とは、契約をやめるというニュアンスを持った概念です。契約行為そのものに問題はないけれど、契約後に都合が悪くなった(例えば、代金が払えないなど)場合に行われることが多いです。
 取消しと登記が関係する物権変動の場合、「取消前の第三者」と「取消後の第三者」の保護について分けて考える必要があります。

取消前の第三者の保護

 まず、人物Aが制限行為能力者だった場合についてです。この場合、AとBの間で契約の取消しが行われる前に物権の引渡しが完了していたとしても、CはAに対して所有権を対抗(主張)できません。逆を言えばAはCに所有権を対抗できることになります。
 次に、人物AとBの間の契約が詐欺によって結ばれていた場合です。この場合、Cが善意であるならば民法96条3項によって、所有権を対抗できます。この場合、Cは登記をしていることがなくても保護されます。
 最後に、人物AとBの間の契約が脅迫によって結ばれていた場合です。この場合、Cの所有権は保護されません。

取消後の第三者の保護

 取消権者Aと取消後の第三者Cとは、Bを基点とする譲渡類似の対抗関係に立ちます。ゆえに、両者の優劣は登記の先後で決まります。つまり、先に登記をした者が権利を取得するのです。

解除と登記

解除前の第三者の保護

 解除前の第三者が保護されるためには、登記が必要となります。

解除後の第三者の保護

 取消後の第三者と同様です。AとCの対抗の優劣は登記の先後で決まります。つまり、先に登記をした者が権利を取得するのです。

相続と登記

共同相続と登記

 共同相続とは、相続人が複数いる場合をいいます。
 共同相続人の1人が、勝手に単独登記をして第三者に土地全部を譲渡したとします。この場合、他の相続人は、登記がなくとも自分の持分を第三者に対抗することができます。

相続放棄と登記

 共同相続人の1人が相続を放棄したとします。次に、他の相続人が登記をしない間に、相続放棄をした者の債権者が、相続放棄した債権者の持分だったものを差し押さえたとします。このような場合、他の相続人は、相続放棄による持分の取得を登記がなくとも第三者(この場合は債権者)に対抗でします。

遺産分割と登記

 遺産分割とは、共同相続の場合に相続人の間で、相続分の割合に従って財産の分け方を定めることをいいます。
 遺産分割における第三者との関係は、遺産分割前と後で分けて考える必要があります。
 まず、遺産分割前の第三者との関係についてです。
 共同相続人の1人Bが遺産分割前に自己の持分(β持分)を第三者に譲渡したとします。その後、遺産分割によってβ持分が他の相続人Aの所有となった場合、第三者Cはβ持分の取得をAに対抗するためには登記が必要となります。

 次に、遺産分割後の第三者との関係についてです。
 共同相続した土地が遺産分割の結果、Aの単独所有としたとします。しかしAが、その登記を怠っていたところ、Bが自己の持分(β持分)を第三者Cに譲渡してしまいました。この場合、CはAよりも先に登記をしていればβ持分の取得をAに対抗できます。

贈与と登記

 被相続人Dから、特定不動産の遺贈を受けたBが、Dの死亡後、所有権転移登記を怠ったとします。登記をしないうちに相続人Aの債権者が、この不動産を差し押さえてきた場合、BがCに所有権を対抗するには、登記が必要となります。

被相続人からの譲受人

 相続人と被相続人は同一人物とみなされます。譲受人との関係は当事者関係となるので、譲受人は、登記なくして相続人に対抗することができます。

時効取得と登記

 取得時効とは、他人の財産権を一定期間継続して占有または準占有する者に、その権利を与える制度をいいます。

占有開始当初からの所有者との関係

 時効取得者Aは、時効取得された元所有者Bに対して登記をせずとも時効取得を主張できます。

時効完成前の譲受人との関係

 時効完成前に元所有者Bから不動産を譲り受けた第三者Cがいたとします。この場合、時効取得者AはCに対して登記をしなくても時効取得を主張できます。

時効完成後の譲受人との関係

 時効完成後に元所有者Bから不動産を譲り受けた第三者Cがいたとします。この場合、時効取得者Aは登記をしなければCに対抗できません。

時効の起算点は、動かすことができない

 時効の起算点を動かすことを認めると、時効完成前と後で分けた意味がなくなるため、認められせん。

時効完成後の譲受人が登記をした時点から、さらにあらたな時効が進行する

 Aの時効完成後にDが登記を行ったため、AがDに対して時効取得を対抗できなくなったとします。この場合、Aがさらに時効取得に必要な期間、占有を継続したならば、新たな時効が完成し、Aは登記をしなくてもDに時効取得を主張できます。

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