意思表示

 意思表示とは、社会通念上一定の法律効果の発生を意図しているとみられる意思(効果意思)の表示行為をいいます。
 意思表示は、効果意思、表示意思、表示行為の3つの部分から成り立っています。また、効果意思を形成する前段階に、動機の部分があります。

意思表示のトラブル

 契約は、申し込みと承諾の意思表示の合致によって成立します。しかし、勘違いや他人の脅しによって真意に反する契約を結んだ場合、それを意思表示をした人間に守らせるのは酷というものです。また、私的自治の原則にも反すると言えます。
 そこで民法では、以下の場合において、意思表示をした者を救済するための規定を設けています。

意思の不存在の場合

 表示行為に対応する効果意思が欠けている場合をいいます。
 意思の不存在のよる意思表示のトラブルには、以下のものがあります。
・心理留保
・虚偽表示
・錯誤

瑕疵ある意思表示の場合

 表示行為と効果意志が一致しているけれど、効果意思を形成する過程に瑕疵がある場合をいいます。
 瑕疵のある意思表示による意思表示のトラブルには、以下のものがあります。
・詐欺
・脅迫

心理留保

 心裡留保とは、意思表示を行う者が自分の真意と表示行為の内容との食い違いを自覚しながらする意思表示をいいます。
 例えば、Aさんが、あげるつもりがないにもかかわらず、Bさんに「私の家をあげます」と言うような場合です。

 心裡留保による意思表示は、それを信じた相手方を保護する必要があります。よって、原則有効です。
 ただし、相手方が悪意の場合、普通の注意をすれば知り得た場合は、無効となります。
 心裡留保が無効とされる場合でも『善意の第三者には対抗できない』とするのが通説です。

虚偽表示

 虚偽表示とは、相手方と通じて、真意でない意思表示をすることをいいます。
 例えば、Aさんが、借金取りに自分の家を取られないようにと「Bさんにあげたことにしておいてください」とBさんに頼み、Bさんが「わかりました」と言うような場合です。

 虚偽表示は、法律行為を認めるべき理由はなんらなく、当事者間において常に無効となり、善意の第三者に対抗することができません。
 善意の第三者は、『登記なくして』保護されます。

錯誤

 錯誤とは、表示に対する意思が不存在で、そのことに表意者の認識が欠けていることです。例えば、Aさんが「1ドルで買う」と言うつもりが「1ユーロで買う」と言い間違えた場合がこれにあたります。

 錯誤が成立する要件には以下の2つがあります。

法律行為の『要素』に錯誤があること

 つまり、その物自体の認識を間違っている場合をいいます。
 例えば、八百屋で青リンゴを見て、それを梨と誤認して買った場合が要素の錯誤にあたります。

表意者に重過失がないこと

 重過失とは、錯誤に陥ったことにつき、普通の人に期待される注意を著しく欠いていることをいいます。錯誤となるためには、重過失がないことが求められます。

 錯誤による意思表示は無効となります。
 錯誤による意思表示の無効を主張できるのは、原則、表意者本人のみです。
 だたし、債権保全の必要があり、表意者が錯誤を認めている場合は例外的に、第三者が無効を主張することができます。

 動機の錯誤とは、表示意思の動機の部分に錯誤がある場合をいいます。
 表意者が、動機を意思表示の内容に加える意思を明示または黙示し、かつ、表意者に重過失がない場合は無効になりえます。

詐欺

 詐欺とは、人を騙して錯誤に陥れさせる行為をいいます。

 詐欺による意思表示は、原則として取り消すことができます。
 ただし、取消前の善意の第三者には、そもそも取消しを主張できないので注意が必要です。
 また、第三者が詐欺を行なった場合には、相手側が悪意である場合に限り、意思表示を取り消すことができます。

脅迫

 脅迫とは、相手方に畏怖を生じさせ、それによって意思表示をさせることをいいます。
 脅迫されてなした意思表示は、取り消すことができます。

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