憲法と地方自治

 地方自治とは、国家の一部である地方公共団体が、住民自らの意思と責任に基づき、その地域における政治や行政を行うことをいいます。
 地方自治の存在理由は、大きく分けて以下の2つです。

自由主義的意義

 自由主義的意義とは、中央政府の権力を抑制し、その濫用から少数者や個人を守ることをいいます。

民主主義的意義

 民主主義的意義とは、国レベルの代表民主制を補完し、「民主主義の小学校」としての役割を果たすことです。

地方自治の本旨

 憲法92条には、
「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」
 とあります。
 地方自治は、制度として憲法上保障されています。歴史的に形成された制度の中核部分については、法律によっても侵害することはできないと考えられています。そして、この中核部分にあたるのが、「地方自治の本旨」です。
 地方自治の本旨は、具体的には住民自治と団体自治の2つの要素から構成されています。

住民自治

 住民自治とは、地方自治が住民の意思に基づいて行われているという民主主義的な要素をいいます。住民自治は、中央の代表民主制を補完する役割を果たします。
 この住民自治は、以下の規定によって具体化されています。
・地方公共団体の長、議会の議員などの直接選挙
・地方自治特別法制定のための住民投票

団体自治

 団体自治とは、地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任の下でなされるという自由主義的な要素をいいます。団体自治は、中央政府の権力を抑制する役割を果たします。
 団体自治の内容には以下のものがあります。
・財産の管理
・事務の処理
・行政の執行
・条例の制定

地方公共団体の意義

 地方公共団体とは、地方自治法によれば、以下の2つに大きく分類されます。
・普通地方公共団体
・特別地方公共団体
 憲法上の地方公共団体にあたるのは、判例によれば、このうちの普通地方公共団体(都道府県と市町村)だけです。東京都の特別区はこれに当たらないと考えられています。

首長制

 憲法93条には、
「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。」
「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」
 とあります。
 憲法は国の政治については、議院内閣制を採用しています。これに対して、地方自治においては、地方議会の議員のみならず地方公共団体の長(県知事や市長など)についても住民が直接選挙をして選ぶ規定があります。このシステムは首長制と呼ばれます。
 憲法では、国家レベルにおいては国家意思を形成しやすい規定が採用されています。一方で、地方レベルにおいては、国家レベルにおける代表民主制を補完するため、民意の反映をより重視する仕組みが採用されています。国家レベルと地方レベルで異なる制度があるのは、そういった理由からです。

地方公共団体の機関

 地方公共団体の機関として、以下のものがあります。

地方議会

 地方議会とは、住民の直接選挙によって選出される議員で組織される合議体をいいます。
 地方議会は、住民の代表機関であり、議会機関である点で、国会と同じ性質を有します。しかし、国会が国権の最高機関であるのに対し、地方議会は都道府県知事、市町村長などの執行機関と独立対等な関係に立ちます。

地方公共団体の長

 地方公共団体の長とは、地方公共団体を代表する職務を持つ執行機関です。都道府県に知事が、市町村に市町村長が置かれます。長と議会は対等な関係を持ちます。

地方公共団体の権能

 地方公共団体には、次の4つの権能が定められています。

財産の管理

 地方公共団体が財産を取得、利用、処分できます。

事務の処理

 地方公共団体に属する一切の事務、公益事業の経営などを処理できます。

行政の執行

 課税権、警察権などを執行することができます。

条例の制定

 地方公共団体は、本来の事務である自治事務を実施するのに際して、条例を制定できます。条例とは、地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法をいいます。

地方自治特別法

 地方自治特別法とは、特定の地方公共団体のみに適用される法律をいいます。
 地方自治法の制定にあたっては、通常とは異なり、国家の議決のほかに、当該法律が適用される地方公共団体の住民の同意が必要であることと規定されています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする