憲法における財政監督の方式

 憲法86条には、
「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」
 とあります。
 予算とは、一会計年度(4月1日から翌年の3月31日)における国の財政行為の予定をいいます。
 予算の作成・提出権は、内閣が行い、国会がチェックします。国会でのチェックおいてはあっては、衆議院が参議院よりも先に行います。

 予算の法的性質には論争があり、主に以下の3つの説があります。

予算行政説

 予算行政説では、予算の法的性格を否定します。予算は国会が政府に対して1年間の財政計画を承認する意思であっても、もっぱら国会と政府との間でその効力を有するとします。

予算国法形式説

 予算国家形式説では、法律とは異なる国法の一形式であると考えます。財政民主主義の観点からは予算は法である考えるべきです。
 しかし、
・予算が政府を拘束するのみで、一般国民を直接拘束しない
・予算の効力が一会計年度に限られている
 という点で通常の法律とは異なるものであると予算国法形式説では主張されます。

予算法律説

 予算法律説では、予算は法律それ自体であるとされます。
 その主な理由は以下の2つです。
・予算と法律の矛盾の発生が排除される
・予算を法律とすると国会の予算修正権の限界の問題が生じない

 予算法律説以外の立場をとる場合、予算と法律の不一致が問題となります。
 不一致の例には、
①予算が必要な法律が成立したのに、その執行に要する予算が不成立・不存在の場合
②目的のために予算は成立しているが、その予算の執行を命ずる法律が不成立の場合
 があげられます。
 では、①と②のそれぞれの場合、内閣は以下のように対応するべきとされます。

①の場合

 内閣は「法律を誠実に執行する義務」を負っています。よって、補正予算や経費の流用、予備費支出などの方法によって対処することが求められます。

②の場合

 内閣は支出を実行することはできません。内閣としては、法律案を提出し国会の決議を求めるしかありません。ただし、国会に法律制定の義務を有しません。

 国会は内閣が作成した予算案の決議権を有します。ここで問題となるのが、予算案についての修正権はどこまで有するかです。
 減額修正と増額修正についての見解は以下の通りです。

減額修正

 減額修正については、財政民主主義の観点からいって、国会の修正権に制限がないと解されます。

増額修正

 増減修正については、内閣の予算作成・提出権を損なわない範囲内において可能と解されます。

予備費

 憲法87条の1項と2項には、それぞれ、
「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。」
「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。」
 とあります。
 予備費とは、前もっての予測が困難な事情のために、予算の見積もりを超えた場合に支出される費用をいいます。
 予備費は内閣が支出することができます。この場合、国会の議決に基づく必要があり、また、内閣の責任でこれを支出することになります。

決算審査

 憲法90条の1項と2項には、それぞれ、
「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」
「会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」
 とあります。
 決算とは、一会計年度の国家の現実の収入、支出の実績を示すものをいいます。決算は内閣によって、次の年度に検査報告とともに、国会に提出されます。
 決算審査とは、決算内容の検査をいい、会計検査院と国会によって行われます。

 会計検査院は、法的観点から、決算内容を検査します。
 会計検査院は、合議制の憲法上の必要的機関であり、内閣から独立した地位を有する行政機関です。

 内閣は検査報告とともに、決算国会に提出しなければなりません。国会は提出された決算を審議し、それを認めるか否かを決議することが必要です。
 内閣は、会計検査院による検査が終わった後、翌年度に、その検査報告書とともに決算を国会に提出します。その上で、国会の決算審査が始まります。
 内閣は、決算を衆議院と参議院のそれぞれの議院に同時に提出しなければなりません。
 国会の決算審査においては、両議院一致の議決は必要ではありません。国会が仮に特定の支出を違法と決議しても、その支出の効力には影響を及ぼしません。

内閣の財政状況報告

 憲法91条には、
「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。」
 とあります。
 この条文は、財政状況公開の原則を明らかにしたものです。
 内閣は、国会と国民に対して国の財政状況を報告する義務を有します。

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