憲法における裁判所

 日本において司法権は、裁判所に属します。
 司法権とは、具体的な訴訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用をいいます。

司法の概念を構成する要素

 司法の概念を構成する要素は以下の4つにあるとされます。
・具体的な訴訟が存在すること
・適正手続きの要請などに則った特別の手続に従うこと
・独立して裁判がなされること
・正しい法の適用を保障する作用であること
 このうち、「具体的な訴訟が存在すること」は、司法権の概念の中核をなします。司法においては、まず具体的で法律的な事件がなければ、裁判所は動きません。法律を適用して解決できる事件に対して、法律の解釈を適用し、その事件を裁定します。

司法権の組織

 憲法76条1項には、
「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」
 とあります。
 法律の定められるところによる下級裁判所には、以下の4つがあります。
・高等裁判所
・地方裁判所
・簡易裁判所
・家庭裁判所

 最高裁判所の裁判官は、内閣の任命と天皇の認証により決まります。任期についての定めありませんが、定年は70歳と決まっています。
 最高裁判所長官は、内閣の指名と天皇の任命により決まります。こちらも任期についての定めはなく、定年は70歳です。

 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名と内閣の任命により決まります。ただし、高等裁判所長官のみ天皇が認証します。
 任命の条件は、最高裁判所の指名した者の名簿によります。

司法権の独立

 司法権の独立とは、裁判が公正に行われ、人権が保障されるために重要な原則をいいます。
 法の支配の下、日本国憲法では明治憲法下では不十分であった司法権の独立を著しく強化しています。

 司法権の独立の内容には、以下の2つがあります。

広義の司法権の独立

 広義の司法権の独立とは、司法権が立法権・行政権から独立していることをいいます。
 これは個々の裁判官が独立して職務を行使できるようにするために存在します。裁判所全体として、他の国家機関から独立して活動を行えるような仕組みが必要であることに基づいています。

裁判官の職権の独立

 裁判官の職権の独立とは、裁判官が裁判をするにあたって独立して職務を行使することをいいます。
 これは、単に他の指示や命令に拘束されないというだけではありません。他の機関から裁判について重要な影響を受けないという要請をも含んでいます。裁判官の自由な判断形成に対して事実上重要な影響を及ぼす行為は、司法権の侵すものです。

裁判所規則制定権

 憲法77条の1項から3項にはそれぞれ、
「最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。」
「検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。」
「最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。」
 とあります。
 裁判所規則制定権とは、最高裁判所が、裁判所の内部ルールを制定できる権利をいいます。最高裁判所に裁判所規則制定権が認められているのは、裁判所の自主性の確保と裁判所の専門的判断を尊重するためです。

裁判の公開

 憲法82条の1項には、
「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」
 とあります。
 裁判の対審(つまり裁判が行われる過程)は、公開されるのが原則です。
 また、判決自体については例外なく、常に公開されなくてはなりません。

 憲法82条の2項には、
「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」
 とあります。
 対審の公開には例外があり、以下の要件を満たした場合にのみ、対審を公開しないことが許されます。
・裁判官が全員一致で非公開が必要と判断すること
・公開が公の秩序、または善良の風俗を害するおそれがあること

 ただし、以下のような場合には、例外なく常にその対審を公開しなければなりません。
・政治犯罪である場合
・出版に関する犯罪である場合
・憲法により保障される国民の権利が問題となる場合
 これは、裁判の公正さを損なう危険性を回避し、国民の重要な人権を守ることを目的とする規定です。

違憲審査権

 憲法81条には、
「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」
 とあります。
 違憲審査権とは、法律、命令、規則、または処分が憲法に違反していないかを審査し公権的に判断する権限をいいます。
 憲法は国家の最高規範です。最高規範である憲法に違反する法律は効力を持ちません。
 また、条約についても、極めて明白に違憲無効であると認められる場合には、違憲審査の対象とすることができます。

 違憲審査の方式は、以下の2つに分類されます。

抽象的違憲審査制

 抽象的違憲審査制の場合、特別に設けられた憲法裁判所が違憲審査を行います。この場合、具体的な訴訟とは関係なく、抽象的に違憲審査が行われます。
 抽象的審査制を採用する国としてはドイツ、イタリア、オーストリアがあります。

付随的違憲審査制

 付随的審査制の場合、通常の裁判所が違憲審査を行います。この場合、具体的な訴訟事件を裁判する際に、その前提として事件の解決に必要な限度で違憲審査を行います。
 日本では、違憲審査制は、付随的審査制のみを定めたものだと介されるのが通例です。
 日本の他に、付随的違憲審査性を採用する国には、アメリカやイギリスがあります。

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